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フリーランス薬剤師の働き方|正社員・パート・派遣との違い9軸

フリーランス薬剤師の働き方|薬剤師副業ラボ
  • 頑張っても、給料はほとんど変わらない
  • 働かないおじさんのほうが、自分より給料が高い
  • シフトも異動も、急に入る他店舗のヘルプも、自分では決められない

薬剤師の給与は年功で決まる職場が多く、頑張った年とそうでない年で昇給の幅がほとんど変わりません。シフトも異動も他店舗のヘルプも、決めるのは自分ではない。時間の使い方とその値段を、どちらも他人が握っている状態が続きます。

そこで「フリーランス薬剤師」を調べても、出てくるのは自由と高時給という言葉ばかり。社会保険がどうなるのか、調剤過誤の責任は誰が負うのかが書いていないので、不安の中身が分からないまま動けません。

私も3つとも当てはまっていて、同じところで1年ほど止まっていました。実際に移ってみると、違いは「雇われていない」の一点です。

この記事では、そこから待遇と責任へ波及する9つの軸を並べます。読み終わったときに、自分がその選択をするべきかどうかを判断できます。

✅ この記事がおすすめな人

  • 頑張っている自分より、働かないおじさんのほうが給料が高いことに納得できない薬剤師
  • 昇給の幅を見て、「このままここにいていいのか」と考えたことがある人
  • 業務委託の話が来ていて、受けるかどうか迷っている人
  • フリーランスに興味はあるが、何を失うのか分からず動けない人

📖 この記事を読むと分かること

  • 正社員・パート・派遣・業務委託の違いが、9つの軸で整理できる
  • 「仕事量が保証されない」の実際と、フリーランス新法が引いた最低線
  • 社会保険・税金・賠償責任が、雇用とどう変わるのか
  • 契約先を見つける4つの入口と、損の少ない順番
  • 自分がフリーランスに向いているかどうかを、自分で判断できる
目次

派遣はフリーランスではない

緑に囲まれた舗装路が二手に分かれている

よくある混同を先に外しておくと、派遣薬剤師はフリーランスではありません。派遣は派遣会社と雇用契約を結んでいて、社会保険も雇用保険もそちら側にあります。

時給が高くて職場を選べて上司との関係が薄いという点で感覚が似ているので同じ箱に入れられがちですが、契約の構造はまったく違います。

雇われているか、いないか。この一点が分かれ目です。

私は大手の調剤薬局で正社員をしていて、いまは複数の薬局と業務委託契約を結んで働いています。移った側から見た実感を先に書いておくと、自由になったというより、それまで会社が肩代わりしてくれていたものが全部こちらに来たというほうが正確でした。

その「こちらに来たもの」を、一つずつ数えます。

運営者のニッシェニッシェ

派遣とフリーランスは、求人サイトでも同じ棚に並んでいることがあります。募集要項の雇用形態が「業務委託」になっているかどうかで見分けてください。

4つの働き方を9軸で比べる

「自由度が高い」「高時給」では判断できません。契約として何が違うのかを見ます。

正社員パート派遣業務委託(フリーランス)
契約の相手勤務先勤務先派遣会社薬局(直接)
契約の種類雇用雇用雇用業務委託(請負・準委任)
指揮命令受ける受ける受ける(派遣先から)受けない
仕事量の保証あり契約による契約期間中はあり原則なし
社会保険会社と折半勤務時間しだい派遣会社と折半自分で
雇用保険・労災あり条件しだいでありありなし
税金源泉徴収・年末調整同左同左確定申告
経費使えない使えない使えない使える
過誤の責任原則、会社原則、会社原則、派遣先・派遣会社自分

太字にした欄が、業務委託だけ違うところです。

「指揮命令を受けない」は、薬局長の指示に従わなくていいという意味とは違います。処方箋の応需や監査は薬機法と保険調剤のルールに従いますし、開局時間にも合わせます。

契約上、仕事の進め方を細かく指示される関係にはない、という意味です。

仕事量の保証がない

窓の外に街並みが広がる無人の部屋

雇用契約なら働く日数や時間が契約に書かれていて、会社の都合で一方的に減らすことはできません。業務委託契約には、この保証がないのが普通です。

契約書に書かれているのは業務の内容、時間単価、支払い方法までで、「月に何日発注する」という下限が入っていないことがほとんどです。

来月の稼働がゼロになっても、契約違反にはなりません。相手に落ち度があるわけでもありません。

業務委託は働いた分に対して払う関係であって、雇い続ける約束ではないからです。

「週2日」は約束ではない

問題になるのは、保証がないことを知らないまま生活設計をしてしまうほうです。「週2日でお願いします」と言われて働いていても書面上は1日も約束されていない、という状況は実際によくあります。

口頭やチャットで言われた「週2」は、その時点の見込みにすぎません。契約上の権利には当たらない扱いです。

だからフリーランスとして働くなら、収入は入らなくなる月がありうるという前提で組む必要があります。

フリーランス新法が引いた最低線

台の上に置かれた金色の天秤

保証がないとは書きましたが、完全な無法地帯というわけでもありません。2024年11月1日にフリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されて、発注側にいくつかの義務が課されました。

薬剤師の業務委託にも当然かかるので、知らないと使えない制度として段階ごとに整理しておきます。

すべての業務委託にかかるもの

  • 取引条件の明示:業務内容、報酬額、支払期日などを、書面かメール等で示す義務があります。口頭で済ませることはできません。「口約束でお願いします」は法律上通りません
  • 報酬の支払期日:働いた日(条文では「役務の提供を受けた日」)から60日以内の、できるかぎり短い期間内に支払う。「当月末締め・翌月末払い」はこの範囲に収まります

1か月以上の業務委託にかかるもの

  • 7つの禁止行為:受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入の強制、不当な利益提供の要請、不当な給付内容の変更
  • 募集情報の的確表示:条件を偽ったり、古い情報を出しっぱなしにしてはいけない

6か月以上の業務委託にかかるもの

  • 育児・介護への配慮:申し出があれば、両立について必要な配慮をする
  • ハラスメント対策:相談体制の整備など
  • 中途解除の30日前予告:契約を途中で切る場合、少なくとも30日前までに書面等で予告し、求められれば理由を開示する義務があります

(出典:公正取引委員会 フリーランス法特設サイト)

最後の30日前予告は、フリーランス薬剤師にとって大きい話です。半年以上続いている契約なら、ある日突然「明日から来なくていい」は違法です。

仕事量の保証はないけれど、切るときの手続きには最低線が引かれた。この違いは知っておいて損がありません。

⚠️ 6か月未満の契約には予告義務がかからない

この30日前予告は、6か月以上続く業務委託にだけかかる義務です。短期の契約を繰り返す形だと、この保護は働きません。契約期間の設計を見るときに意識しておく点です。

調剤過誤の賠償は自分が負う

処方瓶とカプセルのクローズアップ

雇われている薬剤師が調剤過誤を起こした場合、患者さんに対して賠償責任を負うのは原則として会社側です。従業員を使って利益を得ている以上、その過程で生じた損害も会社が負う、という考え方によります。

業務委託にはこれがありません。指揮命令を受けない代わりに、結果の責任も自分で持ちます。

賠償額に上限がない

損害賠償の条項を読んで、ここが実感に変わりました。範囲が「故意または重大な過失による場合」に限定されていたのは受ける側に有利な書き方でしたが、賠償額の上限がどこにも書かれていませんでした。範囲は狭いけれど、当たったら青天井ということになります。

薬剤師の業務では、これが重い話です。実際に起きる確率は決して高くないものの、起きたときの金額が大きい類のリスクなので、個人で入れる賠償責任保険が要ります。

賠償責任保険の選び方

選ぶときに最初に確認するのは、業務委託の立場でも加入できるかどうかです。薬剤師向けの賠償責任保険には、雇用されている薬剤師を前提にした商品があり、業務委託だと対象外になることがあります。

日本薬剤師会が案内している制度も正会員向けなので、会員かどうかで選択肢が変わります。保険料と補償額は商品によって幅があるため、金額の比較は別の記事にまとめます。

雇われているうちは、この条項を読む機会すらありません。雇用契約が肩代わりしていたものの中で、金額として一番大きいのはここかもしれません。

運営者のニッシェニッシェ

損害賠償の条項は、範囲と上限の2つを見てください。範囲が「故意または重大な過失」に絞られていても、上限の記載がなければ金額は青天井のままです。

社会保険は全額自己負担

布の上に置かれた電卓

業務委託は原則として国民健康保険と国民年金です。厚生年金ではないので将来の受給額は下がりますし、保険料の半分を会社が払ってくれることもありません。健康保険の傷病手当金もないので、病気で働けない期間の収入は自分で埋めます。

金額のインパクトが大きいところなので、正社員からの移行を考えるときは時給の上がり幅とこの負担増を必ずセットで見てください。額面の時給が上がっても手取りベースで並ぶだけ、ということが起こります。

マイクロ法人という選択肢

ただし別の手もあって、私はマイクロ法人を作ってそちらで社会保険に入っています。法人の役員として給与を出し、その法人で健康保険と厚生年金に加入する形で、個人事業の売上とは別会計にする形です。

💡 マイクロ法人という選択肢

「フリーランス=国保」は一般論であって、法人を作って社会保険に入る道もあります。ただし法人を持つと、決算・社会保険の手続き・法人住民税の均等割が毎年ついてきます。誰にでも勧められるものではありません。

失業給付も育休給付も労災もない

夜、窓に灯りがともるビルの外観

失業給付がありません。契約が切れても、次が決まるまでを埋めてくれる制度はない。

見落とされがちですが、育児休業給付もありません。子どもが生まれても、働けない期間の収入を国が補填してくれる仕組みがフリーランスの側にはない。

労災も原則ありませんし、特別加入という道はあるものの自分で手続きしないとつきません。

仕事量の保証がないことと失業給付がないことは、重なると一気に苦しくなる。収入が止まる可能性があるのに止まったときの受け皿もないという状態をどう埋めるかが、フリーランス薬剤師の設計の中心です。

運営者のニッシェニッシェ

失業給付がないことは知られていますが、育児休業給付も対象外です。子どもを持つ予定があるなら、ここは移る前に確認しておいてください。

確定申告と、使えるようになる経費

テーブルに積まれた硬貨

給与ではないので源泉徴収されず、年末調整もありません。毎年2月から3月に自分で確定申告をします。

面倒が増えるぶん有利になる面もあって、業務に必要な支出を経費にできます。書籍代、研修費、業務用の通信費、契約先へ向かう交通費、白衣。

経費が増えれば、税金がかかる所得はその分だけ小さくなります。

帳簿を整えて青色申告を選べば、そこからさらに一定額を差し引ける控除も使えます。会社員には給与から自動で差し引かれる給与所得控除がありますが、フリーランスの場合は自分で集めた領収書がその代わりになる、という違いです。

インボイスに登録するか

インボイス制度もあります。薬剤師の業務委託は消費税がかかる取引なので、報酬に消費税が乗ります。

売上が小さいうちは消費税を納めなくてよい「免税事業者」でいられますが、その場合、報酬を払う薬局の側が自分たちの消費税を計算するときにこちらへ払った分を差し引けません。そのぶん薬局の負担が増えるので、インボイスの登録を求められることがあります。

登録すれば消費税を納める側になり、登録しなければ交渉のときに不利になりうる。どちらを取るかという話です。

ここは個々の売上規模と取引先の意向で答えが変わるので断定は避けますが、契約の話をする前に自分が登録するかどうかを決めておくことは勧めます。制度の詳細は国税庁のインボイス制度特設ページで確認してください。

偽装請負の線引き

ペンを持つ手元

契約書のタイトルが「業務委託契約書」でも、働き方の実態が雇用と変わらなければ法的には雇用と判断されることがあります。いわゆる偽装請負です。

判断は契約書の名前ではありません。実態で行われます。目安は次のような点です。

  • 仕事の進め方について、具体的な指示を受けているか
  • 勤務時間や場所が拘束されているか
  • 本人の代わりに他の人が業務を行うことが認められているか
  • 報酬が、成果に対してではなく拘束時間に対して払われているか

薬局の業務は開局時間に合わせて店舗にいる必要があり、時間単価で払われることも多いので、この線引きが構造的に曖昧になりやすい職種です。だからといって直ちに違法というわけでもありません。

実態が雇用だと判断されれば、労働者としての保護(雇用保険、労災、解雇の規制)が受けられる可能性があります。

逆に、掛け持ちや働く日の選択といった自由は、制限される方向にも働きます。

自分がどちら側に立ちたいのかを先に決めておく論点です。個別の判断が必要なら、労働局か弁護士に相談してください。

正社員の保証を過大評価していた

窓辺に立つ男性のシルエット

大手の調剤薬局にいたころ、一番納得できなかったのは頑張っても評価されない仕組みでした。個人の成果が待遇に反映される構造になっていないので、もっと働いてもうまくやっても、給与テーブルの上を動くだけです。

そこで、正社員でいることの「保証」の中身を数えてみました。

正社員の保証の中身

会社が潰れない保証も、その部署が残る保証も、給与が上がり続ける保証も、本当のところは誰もしてくれていません。保証されているのは、時間を差し出し続けるかぎり毎月同じ額が入ることだけで、しかもその額は自分の努力ではほとんど動かせない。

それなら、保証を薄くする代わりに単価を上げにいく。私はそちらを選びました。

契約先は辞める前に見つける

森の中で二手に分かれる道

契約先を見つけてから辞めてください。理由は単純で、無職の状態で交渉に臨むと足元を見られるからです。

在職中なら条件を断れる

💡 交渉で効くのは「断れる状態」

収入がゼロの人は、提示された条件を断れません。相手にもそれが分かります。いま働いている場所がある状態なら「その条件なら今のままでいます」と言える。この一言が言えるかどうかで、時給は変わります。

正社員を続けながら週1日でも業務委託の枠を持ち、そこで手応えを確かめてから比重を移す。遠回りに見えて、これが一番損の少ない順番です。

運営者のニッシェニッシェ

先に辞めてから探すと、面談で「いつから入れますか」と聞かれた時点で足元を見られます。在職中なら「今の条件を上回るなら」と言えます。

契約先の4つの入口

木製テーブルの上に置かれた鍵の束

「フリーランスになりたいが、仕事の取り方が分からない」というのが最初の壁です。

単発バイトのアプリから入る

スポットワーク系のアプリで1日単位の勤務から始める方法で、辞めずに試せるのが最大の利点です。複数の薬局を短期間で見られるので、「合いそうな薬局」を先に見つけてから継続の話を持ちかける流れも作れます。
ただしこれらのアプリは多くが雇用契約(短期アルバイト)です。業務委託には当たりません。契約の形はアプリによって違うので、登録前に利用規約か求人票の「雇用形態」の欄を確認してください。

そこが雇用なら、何日働いてもフリーランスになったことにはなりません。

派遣で働いて感覚をつかむ

派遣は雇用なのでフリーランスに当たりませんが、時給の相場観と職場を選ぶ感覚を身につける場としては有効です。派遣で得た「この条件なら受ける/受けない」の基準は、そのまま業務委託の交渉に持ち込めます。

エージェントで相場を確かめる

遠回りに見えますが、フリーランスの目的が単価なら、まず正社員・パートの市場で自分の値札を確かめる価値はあります。エージェントは相場を数字で持っているので、面談で聞ける情報が多いところも利点です。

直接、薬局に声をかける

仲介が入らないぶん単価は一番高くなりますが、相手を知らないと契約条件でもめやすく、実績がないうちは相手にされないこともあります。最初の1件をこれでやるのは、あまり勧めません。

入口は人によって違います。単発から入る人もいれば、派遣で相場を確かめてから移る人もいる。どれか1つを正解だと思い込まないでください。

向き不向きの分かれ目

草地の中に続く砂の小道

向いている人

  • 収入が月ごとに変動しても、慌てずに済むだけの現金がある
  • 契約書を読むこと、条件を交渉することが苦にならない
  • 確定申告や保険の手続きを、自分でやる(または外注する)覚悟がある
  • 職場に評価されるより、単価で報われたい

向いていない人

  • 毎月同じ額が入ることを前提に、住宅ローンなどの固定費を組んでいる
  • 交渉を「感じが悪いこと」だと感じてしまう
  • 事務作業を後回しにする癖がある(確定申告は待ってくれません)
  • いまの職場の不満が、人間関係や業務内容によるもの

⚠️ 職場が嫌でフリーランスになると、たいてい失敗する

人間関係が原因なら転職で解決しますし、そのほうが失うものが少ない。フリーランスは働き方の構造を変える手段であって、嫌な職場から逃げる手段ではありません。

フリーランスは働き方の構造を変える手段で、嫌な職場から逃げる手段にはなりません。

まとめ

草原の中をゆるやかに続く一本道

フリーランス薬剤師になるかどうかは、安定と自由のどちらを取るかという話とは違います。誰かが決めた額を安定して受け取るか、自分で決めた額を不安定に受け取るかの選択です。

雇用契約が肩代わりしてくれていたものが、そのまま自分の側に移ってきます。

  • 仕事量の保証
  • 調剤過誤の責任
  • 社会保険の折半
  • 失業したときの受け皿
  • 税の手続き

単価が上がるのはその対価です。差額を「儲け」と読むと、たいてい足を掬われます。

📌 迷っている段階の人へ

  • 辞めずに、単発のアプリで1日働いてみる
  • 単発アプリは雇用契約。業務委託そのものの体験にはならない
  • ただし、知らない薬局に入って即戦力になる予行演習にはなる
  • 合わなければ戻ればいいだけ。記事を10本読むより早い

ただし正確に書いておくと、単発アプリの多くは雇用契約なので、これ自体は業務委託の体験にはなりません。それでも、知らない薬局に単身で入ってその日のうちに戦力になるという、フリーランスが契約先を変えるたびにやることの一番近い予行演習にはなります。

記事を10本読むより早いですし、合わなければ戻ればいいだけです。

記事内の写真:Unsplash

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この記事を書いた人

ニッシェのアバター ニッシェ フリーランス薬剤師

大手調剤薬局の正社員から、複数の薬局との業務委託に移った薬剤師です。マイクロ法人の運営と、業務自動化の受託も。契約書のどこを見るか、通勤を入れると時給はいくらになるか、交渉で条件はどこまで動くか。移ってみて分かったことを記事にしています。

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