- 「来月から日数を減らします」と言われて、頭が真っ白になった
- 収入がいくら減るのか、その場ですぐ計算できなかった
- 次のあてが、どこにもない
業務委託には仕事量の保証がないので、「来月から日数を減らします」は契約違反になりません。通知はある日いきなり届きます。
そのとき何をすればいいかを調べても、出てくるのは「早めに次を探しましょう」ばかり。契約書のどこを見るのか、猶予が何か月あるのか、どこへ連絡するのかまでは書いていません。
私も通知を受けた側です。数日で別の薬局にアポイントを取り、2週間ほどで次が決まりました。慌てずに済んだのは、切られる前に用意してあったものを順番に出しただけだからです。
契約書のどこを見るか。家計をどう計算し直すか。
交渉はどこまで粘るか。次をどこから引っ張ってくるか。
手順を全部書きます。いま切られていない人にこそ読んでほしい内容です。
✅ この記事がおすすめな人
- 契約先から日数の削減や契約終了を告げられたフリーランス薬剤師
- 収入源が1社に偏っていて、内心それを不安に思っている人
- これからフリーランスになるつもりで、切られたときの備えを知っておきたい人
📖 この記事を読むと分かること
- 通知を受けたときに動く順番(契約書 → 家計 → 交渉 → 次の一手)
- フリーランス新法が定めた「30日前予告」の使いどころ
- 生活防衛費(収入が止まったときに取り崩す貯金)を何か月分持つかの決め方
- 数日でアポを取れた「準備の中身」の正体
- 決まってから入金までの空白をどう埋めるか
答えは切られる前にある

通知が来てから調べ始めることと、来る前に済ませておくことは、まったく別物です。私が実際に動いた順番はこうでした。
- 契約書の条件を確認する(すでに知っていた)
- 家計を再計算する
- 相手と交渉する
- 次の契約先へ連絡する
このうち1は、通知が来てから読んだのでは遅すぎますし、2も防衛費がゼロの状態で計算したところで絶望するだけです。4にいたっては、通知が来てから人脈を作ることはできません。
この手順の大半は、平時のうちに終わらせておくものです。切られた瞬間にやるのは「用意してあったものを順番に開ける」だけです。
手順1・契約書は先に読む

私は通知を受けたとき、契約書を慌てて探しませんでした。契約終了は1か月前に伝える、と書かれていることを知っていたからです。
だから通知を受けた時点で、あと1か月は今の収入が続くのでその間に次を決めればいい、と考えることができました。
これが「契約書に何が書いてあるか知らない」状態だったら、まず書類を探し、条項を読み、意味を調べるところから始まります。その数日は、本来なら次を探すために使うべき時間でした。
確認しておくのは3か所だけです。
契約期間と更新のしかた
いつまでの契約か、そして更新が自動なのか合意が必要なのかを見ます。
「1年契約・自動更新」なら、更新のタイミングで何も言われなければ続きます。「1年契約・双方の合意により更新」だと、更新時期が来るたびに切れる余地があります。更新の月が近づいたら、こちらから確認を入れておくだけで、不意打ちは減らせます。
解約予告はお互い同じ日数か
何日前に言えば切れるのかを見るわけですが、30日前か60日前かという日数そのものより大事なのは、こちらと相手が同じ条件になっているかどうかです。
契約書では、仕事を出す側(薬局)が「甲」、受ける側(自分)が「乙」と書かれるのが一般的です。表紙や第1条に「以下、甲という」と定義されているので、まずそこを確認してください。
- 「甲乙いずれも30日前までに書面で通知することにより解約できる」→ 両者が同じ条件。公平です
- 「乙は60日前までに申し出る。甲は30日前とする」→ こちらだけ重い。辞めにくく、切られやすい契約です
非対称になっている契約書は実際にあります。直してもらえる保証はありませんが、聞くこと自体は普通のやり取りですし、直らなくてもそういう契約だと分かったうえで受ければいい。読まずにサインするのが一番まずいという話です。
稼働日数の下限
「週◯日」「月◯時間以上」という保証が書かれているかを見ますが、ほとんどの業務委託契約には書かれていません。業務委託は「働いた分に対してお金を払う」関係であって、雇い続ける約束ではないからです。
問題になるのは、保証がないと知らないまま生活設計をしてしまうほうです。「週2日でお願いします」と口頭やチャットで言われていても、それは契約上の権利に当たらず、その時点の見込みにすぎません。
契約書はPDFにして、スマホからも開ける場所に置いておいてください。通知は電話や立ち話で来ることがあり、その場で条件を確認できると話が早く済みます。
フリーランス新法の30日前予告

契約書に予告期間の定めがなかった場合でも、法律側に最低線があります。2024年11月1日に施行されたフリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)です。
6か月以上続く業務委託を途中で解除する場合、発注側は少なくとも30日前までに書面等で予告し、求められれば理由を開示する義務を負います(公正取引委員会)。半年以上続いている契約なら、ある日突然「明日から来なくていい」は違法になります。
これを知っておくと通知を受けたときの立ち位置が変わり、「いつからですか」と聞き返せますし、予告なしにいきなり止められた場合には、それがおかしいと分かるからです。
6か月未満は予告義務がない
⚠️ 6か月未満の契約には予告義務がかからない
この30日前予告は、6か月以上続く業務委託にだけかかる義務です。短い契約を繰り返す形だと、この保護は働きません。契約期間の設計を見るときに意識しておく点です。
手順2・何か月しのげるか

通知を受けたあと、私は家計を計算し直しました。このとき見る数字を間違えないでほしいのですが、大事なのは「月にいくら減るか」より、「この状態が続いたら何か月もつか」です。
減る金額だけを見ると数字が大きく感じられて動揺しますが、実際に生死を分けるのは、その減少が生活を壊すまでの猶予の長さです。猶予が1年あるなら、それは緊急事態ではなく、次を選ぶ時間があるというだけの話になります。
計算はこれだけです。
しのげる月数 = 自由に使える現金 ÷ (月の生活費 - 残っている収入)
数字を入れてみます。月の生活費が30万円、契約が1つ消えて残る収入が月15万円、自由に使える現金が200万円の場合。
200万円 ÷ (30万円 - 15万円) = 13.3か月
13か月あります。「収入が半分になった」という事実は同じでも、13か月の猶予があると分かった瞬間に緊急事態から降りられて、次を焦って安く受ける必要もなくなります。
同じ条件で現金が30万円しかなかったら2か月なので、同じ出来事がまったく違う意味を持ちます。
計算に入れる「自由に使える現金」からは、次のものを外してください。
- 近いうちに使う予定が決まっているお金(税金、保険料、教育費)
- すぐに現金化できない資産
- 生活口座に入っているが、実質的に生活費として消える分
通知が来てから計算するのでは遅すぎます。防衛費がない状態でこの式を解いても、出てくるのは「2か月」といった数字で、冷静さを取り戻す材料にはなりません。
防衛費を1年分にした理由
フリーランスの生活防衛費は「1〜2年分」という目安が出回っています。会社員なら半年分、という言い方もある。
私は家計全体で1年分にしました。幅のある目安に対して、なぜ下限側で足りると判断したのか。
1年分にした理由
第一に、世帯にもう一つ収入があること。配偶者に安定した給与収入があるので、私の収入がゼロになっても家計が即座に立ち行かなくなりません。世帯全体で見れば必要な厚みは単身のフリーランスより薄くて済みます。
第二に、薬剤師という資格があること。これは職種による差が大きいところで、仕事の受注が景気に左右される職種と違い、薬剤師は資格を持っているだけで働き口があります。仕事が見つからずに1年間ゼロが続くという事態が、現実的に想定しにくい。
月数は一般論から選べません。世帯に他の収入源があるか、自分の職種はどれくらいの期間で次が見つかるかで決まります。この2つを掛け合わせると、こうなります。
| 次が見つかりやすい(資格職) | 次に時間がかかる | |
|---|---|---|
| 世帯に他の収入がある | 1年分 | 1年半分 |
| 自分の収入だけ | 1年〜1年半分 | 2年分 |
私は左上に当てはまるので1年分にしました。
この表は「最低ここまで貯めてから独立しろ」という話とは違います。足りないうちは、正社員やパートを続けながら業務委託を1件持つ形で埋めていけばよく、収入源を増やすことと現金を積むことは同時に進みます。
手順3・交渉は通らなくてもする

契約先とは交渉しましたが、結論から書くと通りませんでした。
こちらの努力や言い方だけの問題ではありません。先方は経営の判断が変わる局面にあり、個々の契約に融通をきかせられる状況ではありませんでした。交渉が通るかどうかは、相手の事情に大きく左右されます。一時的に処方箋が減っただけなら戻る見込みがあるので粘る価値がありますが、経営の方針そのものが変わったなら、こちらが何を言っても動きません。
それでも交渉はしてください。通らなくても確認できることがあるからで、聞くのは次の点です。
- いつから減るのか(猶予の正確な長さが分かる。ここが計算の起点)
- 完全にゼロになるのか、減るだけなのか(残る分があるなら、埋めるべき穴の大きさが変わる)
- 戻る可能性はあるのか(ないと分かれば、きっぱり次へ向かえます)
- 理由は何か(処方箋の一時的な減少なのか、方針の変更なのか。粘る価値があるかの判断材料)
フリーランス新法では、6か月以上の契約を中途解除する場合に求められれば理由を開示する義務が発注側にあるので、これは聞いていい話ですし、聞くべき話でもあります。
💡 交渉のときの言い方
責める形にしないだけで十分です。「承知しました。今後の予定を組みたいので、いつからか、完全になくなるのかだけ教えていただけますか」。これで必要な情報はだいたい出てきます。
今後の予定を組みたいので、いつからか、完全になくなるのかだけ教えていただけますか」。これで必要な情報はだいたい出てきます。
交渉の目的は、条件を戻すことだけに留まりません。次の判断に必要な情報を取ることが本命です。「分かりました」と引き下がると、この情報が手に入らないまま動くことになります。
交渉が通らなくても、「完全になくなるのか、減るだけなのか」だけは必ず聞いてください。残る分があるかどうかで、埋めるべき穴の大きさが変わります。
手順4・2週間で次が決まった
契約終了を伝えられて、数日のうちに別の薬局へアポイントを取り、2週間ほどで次が決まりました。早く動けたのは、探すまでもなく当たる先が分かっていたからです。
このとき求人サイトは開いていませんし、エージェントにも連絡していません。すでに知っている相手に直接連絡しただけでした。
契約先を見つける入口は次の4つです。
| 入口 | 決まるまでの速さ | 単価 |
|---|---|---|
| 知っている薬局へ直接 | 速い | 高い(仲介なし) |
| フリーランス仲間からの紹介 | 速い | 高い |
| 派遣会社・エージェント | 普通 | 仲介分が引かれる |
| 求人サイトから応募 | 遅い | 条件次第 |
上の2つが速いのは、面接や書類選考の前に相手がこちらを知っているからです。ただし平時に関係ができていないと使えず、切られてから作るのは間に合いません。
逆に言えば、この2つを持っている人は切られても数日で動けます。
備えの本体は人だった

私の「準備」の中身は単発アプリ(1日単位で働けるスポットワークのアプリ)への事前登録でもエージェントへの登録でもなく、薬局経営者とのつながりと、フリーランス薬剤師仲間とのつながりでした。
備えというと普通は登録やリスト作りのような作業を思い浮かべますが、実際に次の契約先を連れてきたのは、「困ったときに連絡できる相手が何人いるか」でした。
仲間からは自分では知らなかった薬局を繋いでもらいましたし、経営者側とのつながりがあると求人として表に出る前の話が入ってきます。条件のいい枠ほど、求人として表に出る前に埋まっていく。
登録は穴を埋めるだけ
登録にも意味はあります。稼働の穴を即座に埋めるには有効です。ただし応急処置であって、備えの本体には届きません。
アプリやエージェントへの登録は、済ませたことが記録に残るので準備した気になれます。ただし穴を埋める速さを決めるのは、連絡できる相手の数です。
つながりができる場所

「人脈が大事」で終わると、読んだ人が再現できません。どこで作ったかを書きます。
SNSでつながる
Xなどで同じ立場の薬剤師と繋がる方法で、今日から始められて費用もかかりません。フリーランス薬剤師の母数は多くないので、続けていれば自然と顔ぶれが見えてきます。
コミュニティや勉強会
人が集まる場に属していること自体が、声のかかりやすさにつながります。有料か無料かはあまり関係がなく、継続して顔を出しているかどうかで差がつきます。
実際に働いた現場
単発や派遣で入った先、前職の同僚、取引先。その場では何も起きなくても、あとから声がかかることがありますし、「またお願いします」と言われた薬局は、それだけで連絡できる相手です。
共通しているのは切られてからでは間に合わないということで、どれも平時に少しずつ積むものです。
逆に言えば、いま切られていない人が今日できる備えはここ以外にありません。貯金を増やすことと連絡できる相手を増やすこと、フリーランスの防御はほぼこの2つに集約されます。
決まっても入金までは空く

見落としやすい点として、私のケースでは2週間ほどで次が決まったものの、稼働開始は翌月でした。
契約が決まった時点で安心してしまいがちですが、決まった日と、働き始める日と、お金が入る日は全部違います。業務委託の支払いは「当月末締め・翌月末払い」が一般的ですし、フリーランス新法でも、報酬の支払期日は働いた日から60日以内と定められています。
順番にすると、
- 契約が決まる
- 翌月から稼働を開始する
- その月の分は、さらに翌月末に入金される
この順で進むと、決まってから最初の入金まで2か月前後の空白が生まれます。生活防衛費で食いつなぐのはまさにこの期間で、「次が決まったから大丈夫」と考えず「次が決まっても、しばらくは持ち出し」と考えておいてください。
契約が決まったら、その場で初回入金日をカレンダーに入れてください。締め日と支払日を聞けば計算できます。ここを数えないと、防衛費の減り方を読み違えます。
空白は単発で埋める
次が決まってから入金までの空白をどう埋めるかというと、答えは単純で、1日単位で入れられる仕事を挟みます。
薬剤師にはこの点で恵まれた選択肢があって、スポットワーク(単発バイト)のアプリなら面接も履歴書もなく1日から入れて、支払いのサイクルも短い。空いた日に1日入れるだけで、数万円単位で穴が埋まります。
平時のうちに登録だけ済ませておいてください。登録には薬剤師免許の確認などの手続きが必要で即日というわけにはいかないので、「今すぐ働きたい」と思ったときには間に合いません。
登録しておくと普段から案件と時給が見えるので、自分の地域の相場が分かり、交渉のときの基準にもなります。
派遣で数か月を埋める
もう少し安定した形で埋めたいなら派遣という手もあります。派遣は雇用契約なのでフリーランスに当たりませんが、そのぶん一定期間の稼働が契約で決まりますし、「業務委託の枠が減った分をしばらく派遣で埋める」という組み方は現実的です。
派遣会社によっては、関東・関西で時給の最低保障を設けているところもあります。
| 埋めたい期間 | 向いている手段 |
|---|---|
| 数日〜2週間 | 単発アプリ |
| 1〜3か月 | 派遣 |
| それ以上 | 新しい業務委託先を探す |
どれも切られてから登録すると出遅れます。登録は無料ですし、募集を眺めているだけでも相場観がつきます。
切られる前のチェックリスト

この記事の内容を平時のチェックリストにすると次のとおりで、全部やっても半日かかりません。
📌 今日できること
- 自分の契約書を開き、契約期間・解約予告の日数・日数の保証の3か所を確認する
- 予告の日数が双方で同じかを見る
- 契約書をPDFで手元に保存し、いつでも開ける場所に置く
今月中にやること
- 「しのげる月数」を計算する(自由に使える現金 ÷(月の生活費 - 残る収入))
- 目標の月数を決める(世帯に他の収入があるか、次が見つかりやすい職種かで判断)
- 単発アプリに登録する。免許確認まで終わらせておく
継続してやること
- 収入源を1社に依存しない。2社以上に分けておく
- 連絡できる相手を増やす(SNS、コミュニティ、働いた現場)
- 契約の更新月を把握し、近づいたらこちらから確認を入れる
このうち一番差が出たのは最後の2つです。手続きよりも、関係のほうでした。
やってはいけないこと

焦って条件を下げる
収入が減ると分かった直後は、提示された条件を飲みたくなります。しかしそこで下げた単価は次の契約の基準になってしまうので、猶予が何か月あるかを先に計算しておくのは、この判断を落ち着いてやるためでもあります。
相手を責める
仕事量の保証がないのが業務委託なので、減らされたこと自体は契約違反に当たりません。関係を悪くすると、戻る可能性と紹介してもらえる可能性の両方を失いますし、実際に後から枠が戻るケースもあります。
誰にも言わない
これが一番もったいない。仲間に「いま枠を探している」と伝えるだけで情報は動きますが、黙って求人サイトを見ている時間は、たいてい無駄に終わります。
空いた時間を放っておく
稼働が減ると時間が余ります。その時間を次の仕事探しだけに使うと精神的に消耗するので、単発を1日入れる、資格や知識の整理をする、記録を書き残すというように手を動かしていたほうが、結果的に早く立て直せました。
まとめ

契約を切られたときにやることは順番が決まっていて、契約書を確認し、何か月しのげるかを計算し、交渉して情報を取り、次の契約先へ連絡する、という流れです。
ただしこの手順のほとんどは、切られる前に終わらせておくものです。
- 契約書は先に読んでおく
- 防衛費は先に貯めておく
- 連絡できる相手は先に作っておく
いま切られていない人が今日できることは2つだけです。自分の契約書を開いて予告期間と日数の保証を確認すること(5分で終わります)と、連絡できる相手を1人増やすこと。
⚠️ 収入源が1社しかない人へ
そこを2社にすることを最優先にしてください。1社が全体の100%を占めている状態は、その1社の判断がそのまま自分の生活の判断になるということです。切られる怖さの正体は金額の大きさではなく、この構造のほうにあります。
切られる怖さの正体は、金額の大きさよりもこの構造にあります。
この2つがあるかないかで、通知を受けた日の景色は完全に変わります。
記事内の写真:Unsplash

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